三重交通グループの価値ある事業とは何か
法律家、行政の法律顧問の立場から地域の発展のために事業成長を支援してまいります
社外取締役 楠井 嘉行
当社は2015年3月に東京証券取引所第一部に上場し、その後2022年に東京証券取引所による市場再編を受けて最上位のプライム市場への移行を選択しました。当社は経営理念を「三重交通グループは、お客様の豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献します」と定めています。このグループ理念を実現するために将来ストーリーを描きながら、プライム市場が要求する高度なガバナンス水準の構築と情報開示に取り組み、これからも企業価値向上に力を入れていただきたいと思います。
私は2014年に当社の社外監査役に選任され、2016年からは社外取締役に就任しました。就任以降、取締役会には毎回出席し、弁護士の知見から忌憚なく意見を申しあげてきました。私は当社の取締役会は実効性が高いと思います。取締役会の開催前には事務局による事前説明が行われ、月次の業績報告や取締役の職務執行状況報告といった情報提供に加え、議題が上程された背景についても補足説明があります。また社外取締役と取締役の連絡協議会も設定されるため情報共有がスムーズに行われ、取締役会の場は質の高い議論が行われる会議となっています。2020年には当社で初となる女性の取締役が誕生し、社外取締役は現在4名のうち2名を女性が務めるなど、この数年で多様性の確保が進んできた点も評価しています。
2023年度は全セグメントで営業収益が伸び、グループ全体で3期連続の増収増益、各利益項目は過去最高となりました。新型コロナ5類移行により社会経済活動が正常化され人流が回復するとともに、インバウンド需要の増加もありレジャー・サービスセグメントも好調が持続しているようです。一部厳しい環境が続く業種もありますが、総じて経営は再び成長軌道へ戻りつつあります。コロナ禍の苦境をどう乗り越えるか、これまでグループ一丸で取り組んだ成果が表れてきました。今後も中期経営計画(2023-2026)で掲げた財務・非財務それぞれの目標達成に向けて邁進してほしいと思います。私は、三交不動産で賃貸オフィスビル計画が進むとともに、売却型賃貸マンションといった新しいビジネスモデルが生まれ、収益基盤が拡充していることを評価しています。また、財務・非財務双方の充実で企業価値を上げていく努力も必要ですから、男性の育児休業取得率など、非財務の目標数値達成にも注力していただきたいと思います。
中期経営計画ではサステナビリティへの取組みを基本方針に掲げていますが、地域の発展に貢献するために環境課題に対してはより積極的な関与を求めていきたいと思います。三交不動産(株)による太陽光発電事業(発電規模114メガワット)をはじめ、グループ各社においても施設やバス車両等への太陽光発電設備の設置、各種クレジット購入によるCO₂のオフセット等、環境に配慮した経営に努めていますが、今後も新たな再生可能エネルギーの研究等についても精力的に進めてほしいと思います。
また、リニア中央新幹線に対する沿線地域の期待は高く、当社グループにおいても、大きなビジネスチャンスと考えています。リニア中央新幹線の停車駅建設を熱望する声に加え、北勢地域では東京へのアクセスが格段に向上するため、開通後を見据えた地域活性化策も継続して検討が必要です。「第2名古屋三交ビル」の竣工や「(仮称)四日市駅前三交ビル」の建設等、三交不動産を中心に開発は進んでいますが、不動産開発事業のさらなる取組み拡大を期待します。
当社グループは三重県や愛知県、岐阜県を中心に事業を展開しています。独自の観光資源やグループの経営資源を活用して、インバウンドのみならず国内観光客の誘致や地域と連携した交流人口増加を目指し、地域貢献と企業価値向上につなげてほしいと思います。私は元三重県職員で、現在は行政の法律顧問を務める立場でもあります。三重県の発展のために当社グループの皆さんと力を合わせて地域の発展に取り組んでまいります。
少子高齢化を見据えた人的資本経営で地域の安全・安心な未来の実現へ
積極的な取組みに期待します
社外取締役 田中 彩子
私個人としては、当社グループの中で(株)三交タクシーが最も長いお付き合いになります。30年ほど前、介護老人保健施設を立ち上げたばかりの私が仕事と4人の子育てを両立させる際に、子供の送り迎えをお任せできる顔見知りの三交タクシードライバーの存在は本当にありがたかったです。
ご縁があり2021年6月から社外取締役に就任したのですが、就任当時はグループ各社との接点があまりなく、26社(当時25社)の大所帯を三重交通グループホールディングス(株)が管理・監督されているという認識を持っていました。しかし毎月取締役会でお話を聞いていく中でグループ内の結束の強さを知り、この大所帯を一つの家族のように感じるようになりました。当社の取締役、執行役員をはじめ各社の社長は「お客さまの豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献する」という基本理念のもと、同じ方向へ事業の歩みを進めているように見受けます。また母体が交通事業者で公共的なお仕事ということもあり、グループ全社で安全・安心に対する意識レベルが高く、利用者である地域住民と従業員、双方の安全・安心に熱心に取り組まれています。
私は、当社が果たすべき役割は2つあると考えます。1つ目は、2040年まで高齢者人口が増え続けるといわれる中、交通の便が悪い地域についても移動手段確保に使命感を持って取り組むことです。三重県内には大きな幹線道路から距離がある中山間地域にも多くの方が住まわれているため、高齢化が進む中、将来にわたって地域住民の足を維持するためには、自治体等の関係機関と協力し、自動運転などの新しい技術の導入も前向きに検討すべきだと考えます。2つ目は2025年の「大阪・関西万博」をきっかけとした地域活性化です。「大阪・関西万博」では国内外から約2,820万人の来場が見込まれ、当社の事業エリアである近畿・東海一円への波及効果を期待しています。
人手不足解消に向けた取組みはとても重要です。三重交通(株)は60歳を迎えた消防職員がバス運転士として転籍できる協定を三重県内の沿線市町と順次締結しており、これは同社と自治体の双方にメリットのある施策だと考えます。
女性活躍の点では、2020年に就任された(株)三交インの村田陽子社長のご活躍を頼もしく感じています。国の援助も活用しながらコロナ禍を見事に切り抜け、足元の業績も堅調です。これからの時代は経営に対して多様な意見や見方が必要で、女性の活躍が不可欠です。村田社長に続く女性取締役の誕生を心待ちにしています。三重交通(株)では女性初の運行管理者が誕生し、また名阪近鉄バス(株)においても初めて運転士として新卒の女性社員が入社するなど、今後の活躍を期待しています。日頃女性の大型トラック運転士をよく見かける一方でグループ内の女性バス運転士がまだ少ないのは残念ですが、受け入れる企業側の設備や体制さえ整えば、安心して入社する方が増えるはずだと思います。
当社は2030年度に女性の管理監督職比率を30%にする目標を掲げています。現状は15%ですので達成に向けては少し厳しい目標にも感じますが、新卒の女性総合職採用比率は50%に達しています。中途採用も積極的に行っており、女性社員の増加から地道に進められている点を評価しています。女性が妊娠・出産を理由にキャリアを諦めないためにはパートナーの協力と会社の後ろ盾が不可欠ですから、男性職員の育児休業取得率向上の取組みも継続してほしいと思います。