トップメッセージ

変化を力に、持続可能な未来を築く
企業グループを目指します
三重交通グループホールディングス株式会社
代表取締役社長
竹谷賢一

80年間のご愛顧への感謝を胸に

当社グループは2024年2月に創立80周年を迎えることができました。当社グループの歴史は1944年に母体である三重交通(株)が神都交通(株)を中心とした三重県下の交通事業者7社の合併により発足し、地域の生活基盤となる陸上交通を担ったことが始まりです。以来、バス事業を中心に事業の多角化を図り、運輸業から不動産業、流通業、レジャー・サービス業と拡大し、26社の企業グループに成長しました。大きな転換点となったのは、2006年に純粋持株会社である当社(旧・(株)三交ホールディングス)を設立し、グループの経営機能の強化を目指したことです。その後、2009年には社名を三重交通グループホールディングス(株)に改め、資本政策の変更や事業領域の拡大を進め、グループの経営基盤の強靭化を図りました。2015年には企業価値のさらなる向上に向け、東京証券取引所一部上場(現在プライム市場選択)を果たし、日本を代表する企業の仲間入りをすることができました。これもひとえに、お客さま、株主さま、地域の皆さまをはじめ、当社グループを支えていただいたすべてのステークホルダーの皆さまのおかげであると、心より感謝申しあげます。

コロナ禍の経験を活かしてさらなる高みへ

2020年に始まった新型コロナウイルス感染症によるパンデミックでは、当社グループも大きな影響を受けました。外出自粛や行動制限、イベント中止等に伴う旅客輸送や来店客数の減少、営業機会の逸失など、人々の活動そのものが停滞したことで、かつてない厳しい経営を強いられました。しかしながら、この経験は当社グループにとってさらなる成長への糧になっていると考えています。リモートワークの拡大をはじめとしたデジタル技術の活用やグループ内の人事交流による人員配置の最適化など、経営の効率化を進めることができました。

2023年5月に新型コロナウイルス感染症の法律上の分類が変更され、社会経済活動の正常化が進んでいますが、以前から続く少子高齢化に加え、近年は人手不足、物価高騰等が深刻化しています。これらの諸課題への対応を進めることで、当社グループのさらなる発展と社会への貢献を目指してまいります。

中期経営計画(2023-2026)について

2023年5月に策定した4ヵ年の中期経営計画の初年度は、コロナ禍収束の機運が社会に広がり始め、社会経済活動の正常化が徐々に進む環境でした。当社グループはポストコロナの需要取込みを図るとともに、収益基盤の拡充に努めた結果、2023年度における当社グループの業績は全ての利益項目で過去最高の決算となりました。

中期経営計画では、「安全・安心・安定・快適なサービスの提供」、「成長分野の深耕と創造」、「市場の変化に対応した事業モデルの構築」、「サステナビリティへの取組み」、「DXの推進」、「財務体質の改善」といった基本方針のもと、6つの重点施策を掲げています(P11~12参照)。コロナ禍で進めたコスト削減やDX実現に向けたデジタル化を一層推進しながら、収支構造の見直しや事業ポートフォリオの最適化を図ってまいります。併せて持続可能な社会を実現するため、ESGを意識した事業活動や地域との共生を積極的に図り、これまで以上にお客さまの豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献したいと思っています。

次に、中期経営計画の進捗に向けた取組みをお話しいたします。

まず、運輸セグメントにおいては、乗合バス事業では、各種イベントに関連した輸送、貸切バス事業では、旅行事業と連携した輸送など、回復した旅客需要の取込みを図っています。今後開催が予定される「大阪・関西万博」、「アジア競技大会」や「伊勢神宮式年遷宮」などにより、もたらされる効果を確実に享受できるよう、需要と機会の獲得に注力してまいります。グループの信用・信頼の源泉は長年にわたり地域の足を担うバス事業です。経営の根幹である「安全・安心・安定・快適なサービスの提供」の実践に向けて、安全に関わる投資や従業員への教育、新たな商品・サービスの開発に継続して取り組んでまいります。

当社グループの成長ドライバーである不動産セグメントの賃貸事業では、三交不動産(株)が今春、名古屋駅の東・西のエリアにおいて、「第2名古屋三交ビル」、「名駅三交ビル」を開業しました。リニア開業に向けて再開発が進む名古屋駅エリアに、新たな街の景観を創出するとともに、収益基盤の拡充を図りました。売却型賃貸マンションも計画的に竣工し、資産回転型ビジネスとして利益に貢献しています。近鉄四日市駅前においては、2025年春の完成を目指して、三重県下最大級のオフィスビル「(仮称)四日市駅前三交ビル」の建設を進めています。同エリアでは国のバスタプロジェクトも進行中で、当社の運輸、不動産セグメントを中心に、地域と連携した取組みを進め、地域活性化に貢献してまいります。

流通セグメントでは、三重交通商事(株)が運営するガソリンスタンドのセルフ化やカーライフのトータルサポートに注力しており、自動車販売事業を展開する三重いすゞ自動車(株)は、大型・中型の全クラスにおいて、2023年度は三重県内販売シェア1位のポジションにあり、今後も三重県内トップディーラーとしてさらなるシェアアップを目指します。

レジャー・サービスセグメントにおいては、ビジネスホテルチェーンを展開する(株)三交インがインバウンドの増加に伴う宿泊需要を取り込み、収益を伸ばしています。また、スキー場のある御在所ロープウエイでは、1~3月(冬季)にインバウンドのお客さまが3割を占め、人気のスポットになっています。社会経済活動の活発化が進む中、引き続き国内外のお客さまの誘致活動に努めるとともに、質の高いサービスの提供に取り組んでまいります。

サステナビリティ経営

当社グループでは、グループサステナビリティ推進委員会を中心に、「グループサステナビリティ基本方針」のもと、サステナビリティ経営をグループ全体で横断的に進めています。環境(E)、ソーシャル(S)、ガバナンス(G)についての重要課題(マテリアリティ)に対する各目標は、長期ビジョンの実現に向けての重要項目でもあり、事業計画と連動しながら達成を目指してまいります(P15~16参照)。

環境分野においては、特に気候変動が事業活動に大きな影響を与える重要な課題であることを認識し、CO2の削減目標(KPI)を定めています。三重交通(株)では、2014年から全国に先駆けて大型電気バスを導入しており、現在5台の電気バスを保有しています。また、2024年4月、通常の大型路線バスの約1.6倍の輸送力をもつ「ハイブリッド連節バス」を新たに四日市エリアに2台導入し、伊勢エリアで運行中の車両と合わせて計4台を運行しています。名阪近鉄バス(株)においても、運行を受託しているイオンモール熱田(名古屋市)のシャトルバスに燃料電池バスを導入するなど、環境にやさしい車両の配備を進めています。三交不動産(株)では、2022年度から、トラッキング付FIT非化石証書を活用し、自社使用電力を実質再エネ化しているほか、33ヵ所で太陽光発電事業を行っており、再生可能エネルギーの安定供給と温室効果ガスの削減に貢献しています。また、「第2名古屋三交ビル」においては、ZEB Oriented(一次エネルギー消費量40%以上削減)認証を、現在建設中の「(仮称)四日市駅前三交ビル」においては三重県のテナントビルで新築時に初めてZEB Ready(一次エネルギー消費量50%以上削減)認証を取得しました。ビジネスホテルチェーンを展開する(株)三交インでは、CO2排出量の削減に貢献するため、愛知県及び三重県で運営するホテル10店舗において、カーボン・オフセット都市ガスを導入しています。また、ご宿泊のお客さまにロビーにて必要なアメニティグッズだけを自由に選んでいただく「アメニティBAR」の設置や同グッズを再生プラスチック等の素材に切り替えるなど、環境負荷低減への取組みを進め、さらに、全15ホテルの全客室に、プラスチックごみを主原料とする中わた素材を使用した“地球環境にやさしい寝具”を導入しました。

ソーシャル分野においては、持続可能な企業として成長し続けるために、「経営方針・事業戦略を理解し、環境変化に適応し得る人材育成」を重点課題と位置付け、人的資源の充実、企業体質の強化を図る方針です。

また近年、「人権」に関する対応要請はますます強まっており、サプライチェーンを含む事業活動を進めていく上で、あらゆる人々の人権を尊重し、その責任を果たすため、国連や国際機関の基準等に沿った「人権方針」を制定し、人権尊重の取組みを推進しています。

多様な人財の採用強化については、新卒・経験者を両軸とする採用を基本とし、女性管理監督職比率の向上に向けた積極的な採用、各人のキャリアを鑑みた登用・キャリア形成支援などを実施しています。新卒採用(総合職)においては女性比率を50%とするほか、社会経験豊富な経験者採用においても強化・拡大を図るとともに、ジョブ・リターン制度を整備するなど、再入社しやすい環境を整えてまいります。

また、将来を担う優秀な人財の採用を促進するため、初任給の引上げなど、若手人財の処遇を大幅に見直したほか、障がい者や外国人の採用も強化し、ダイバーシティの推進を図るとともに、少子高齢化の進行、生産年齢人口の減少への対応を進めています。さらに、バス・タクシーの乗務員等、労働時間規制の強化(いわゆる2024年問題)がなされた職種については、全国的に人材不足が深刻化していますので、採用を強化するとともに、処遇面や労働環境の改善を実施しています。

従業員が心身ともに健康であることが企業成長の基盤となることから、会社、従業員、健康保険組合・労働組合等が一体となって、健康経営に資する取組みも進めています。2022年9月に「三重交通グループ健康経営推進委員会」を発足させ、併せて「三重交通グループ健康経営宣言」を制定しました。

また、労働環境をより改善するため、仕事と家庭生活の両立、定着率の向上を目指し、育児・介護休業から円滑に復帰できる勤務プランなどを整備・実施しているほか、有給取得率の向上や男性の積極的な育児参加を図るため、法定以上の育児休職制度に改定するなど、働き方改革を進める環境を整備しています。また、グループ10社が2023年度以降、定年延長を導入したほか、三重交通(株)では、60歳を迎えた消防職員が、同社のバス運転士として転籍できる協定を沿線市町と順次締結するなど、運転士の人材確保と消防職員への新たな活躍の場の提供につながる取組みも開始しました。

サステナビリティ推進体制

サステナビリティ推進体制

DX実現に向けたデジタル化の推進

デジタル技術を活用し、当社グループの運輸サービスをより多くの皆さまに、より快適にご利用いただける取組みを進めました。三重交通(株)では、スマートフォンやパソコンなどから路線バスの現在地が確認できる三重交通バスロケーションシステム「Bus-Vision」を導入し、順次対象エリアを拡大してまいりましたが、2024年4月に全エリアへの導入が完了しました。また、路線バス情報の標準フォーマットである「GTFSデータ」をオープンデータとして公開し、「Googleマップ」、「Yahoo!乗換案内」、「Yahoo!マップ」、「JR東日本アプリ」のスマートフォンアプリにおいて、同社路線バスのリアルタイムな位置情報の提供を開始し、国内外から三重県に来訪されるお客さまの利便性の向上を目指しています。名阪近鉄バス(株)においては、事務所内から観光バスのお客さまをご案内するバーチャルバスガイドのシステムを導入するなど、観光バス事業の運営に新たな工夫を取り入れています。

当社グループの新たな情報発信ツール「三重交通グループアプリ」は、2024年8月末時点で4万8千人を超えるお客さまにご利用いただいています。このアプリの活用で、バスのフリー切符などデジタルチケットの提供が大変スムーズになりました。直近のアップデートでは、デジタルチケットの購入にキャッシュレス決済サービス「PayPay」の利用が可能になりました。

今後もお客さまに快適なサービスを提供できるよう、自由な発想とデジタル化への挑戦を続け、DXに向けて取り組んでまいります。

変革の歩みを止めずに成長し続ける

当社グループは創立80周年という節目を越え、さらなる成長に向けて歩み出しました。これからも、創立当初から受け継がれてきた伝統を大切に守る一方、従前の慣習や業務の枠組みにとらわれずに未来に挑戦することで、事業環境の急激な変化に柔軟に対応できる企業グループを目指します。ステークホルダーの皆さまからの期待と信頼に応えることができるよう、邁進してまいりますので、引き続きご支援賜りますようお願い申しあげます。

竹谷賢一
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