
当社グループは現在26社で構成しており、幅広い分野の事業を展開しながら、地域の課題に向き合い、社会に価値を提供してまいりました。それぞれの事業が互いに補完し合うことで安定した経営基盤を築くとともに、多角的な事業展開は、変化する社会や経済環境に柔軟に対応できる力となっています。私たちは、地域の暮らしや社会が抱える課題に真摯に向き合いながら、「安全・安心・安定・快適なサービスを提供」することを通じ、地域と共に持続的に成長し、企業価値の向上を目指しています。
2024年2月には、三重交通グループは創立80周年という大きな節目を迎えました。ここまで歩みを進めることができたのも、ひとえにステークホルダーの皆さまのおかげであり、心より感謝申しあげます。
2025年は、80周年の翌年にあたり、新たな挑戦を本格化させる年として位置付けています。これまで培ってきた信頼と経験を土台に、変化の激しい社会環境の中でも成長を続け、地域と共に未来を築く決意を新たにしております。私たちは、地域の皆さまから信頼される企業であり続けるため、これまで以上に社会課題に向き合い、持続可能な価値を提供してまいります。
近年、世界的な地政学リスクの高まりや物価上昇など、日本の経済・社会環境は大きな変化に直面しています。加えて、国内では人口減少や高齢化が急速に進行しており、地域経済や公共インフラを取り巻く課題もより顕在化しています。一方で、デジタル技術の進化や人々の価値観の多様化は、新しいビジネスやサービス創出に大きな機会をもたらしています。こうした環境変化を的確に捉え、経営資源を最適に活用することが、持続的成長を実現する鍵となります。
当社グループでは、こうした環境下においても、各事業領域で収益基盤の強化を着実に進めてまいりました。2025年3月期決算においては、バスの運賃改定や賃貸ビルの新規開業、トラックの新車販売台数増加、ビジネスホテルの客室単価上昇などが寄与し、4期連続で増収増益を達成いたしました。各利益項目は2期連続で過去最高を記録し、営業利益及び当期純利益は、中期経営計画の最終年度目標にほぼ到達しています。
こうした成果を踏まえ、当社グループは中期経営計画に基づき、持続的な成長と企業価値向上に向けた取組みを進めています。次に、その進捗と成果をご報告いたします。
当社の中期経営計画は2023年5月に策定され、現在3年目を迎えています。本計画では、「安全・安心・安定・快適なサービスの提供」を起点とした6つの基本方針(P13参照)に基づき重点施策を定め、着実な実行を通じてグループ全体の収益基盤を拡充することを大きな目標としています。これまでの取組みにより、多くの成果を上げることができました。
最新の業績動向等を踏まえ、2026年3月期の連結業績予想を営業収益1,090億円、営業利益91億円、経常利益90億円、最終の当期純利益61億円に引き上げました。一方、中期経営計画最終年度の目標数値については、待遇改善に伴う人件費の上昇や物価高騰による原価、費用の増加、金利上昇の影響を見極める必要があるため、据え置いていますが、本年度の見通しを上回れるよう、引続き各種取組みを進めてまいります。
各セグメントの取組みについて、運輸セグメントでは、観光需要の回復が見込まれ、「万博」などの大型イベントの輸送需要を着実に取り込んでいます。2026年度も、愛知県で開催予定の「アジア競技大会」や、伊勢神宮の遷宮行事の一つである「御木曳」により、国内外から関係者や観光客が訪れることが見込まれ、輸送・宿泊関連の需要増加に対応してまいります。
不動産セグメントでは、三交不動産(株)が賃貸事業において、2024年に名古屋駅周辺で「名駅三交ビル」と「第2名古屋三交ビル」を開業、2025年8月には三重県内で「四日市三交ビル」を開業し、収益基盤の拡充を図っています。分譲事業では、従来のマンションや戸建住宅の販売に加え、売却型賃貸マンションの計画的な開発・売却も推進しています。また、三重交通(株)は、2022年3月に閉鎖した「名阪上野ドライブイン」の跡地に物流倉庫を建設し、運送会社に賃貸します。今後も保有資産の価値向上に努め、収益性を高めてまいります。
流通セグメントでは、三重いすゞ自動車(株)において中古車販売の収益拡大を目指し、新規販売拠点の開設を検討しています。石油製品販売事業では、ガソリンスタンド(SS)のセルフ化を推進した結果、2025年3月期におけるSSでの販売数量は前期と比べて増加しました。生活用品販売事業(ハンズFC)においても、タイムリーな商品提供やインバウンド需要の取込みにより、さらなる収益向上を目指しています。
レジャー・サービスセグメントでは、拡大するインバウンドの旅行需要等に対応するため、ビジネスホテルの新規出店を計画しています。2028年春に、三交不動産(株)が「四日市三交ビル」の隣接地に建設中の「四日市三交ビル アネックス」において(株)三交インが出店を予定しており、今後も事業規模の拡大を目指してまいります。各施設でも、インバウンド需要が増加しており、御在所ロープウエイや鳥羽シーサイドホテルでは個人客やインバウンド向けの取組みを強化し、施設内消費単価の向上やサービスプランの充実を図っています。
当社グループは、株主の皆さまに対する利益の還元を経営上の重要な施策の一つと位置付け、株主還元及び株主優待の拡充に取り組んでまいりました。2025年3月期の配当金は、期末配当として1株当たり8円、中間配当6円を合わせた年間配当は前期比2円増配の14円となり、株主の皆さまへの還元を強化いたしました。2026年3月期はさらに普通配当を2円増額し、年間配当16円(中間8円、期末8円)を予定しています。
今後は、安定的に配当することを基本方針としつつ、持続的な企業価値の向上を前提とし、連結配当性向30%を目指す方針を掲げています。これにより、業績向上に基づく株主還元を強化し、株主の皆さまに対する利益還元の姿勢を明確にしています。
株主優待制度についても、より多くの株主の皆さまに当社グループのサービスを体験していただけるよう内容を見直し、優待区分を増設しました。また、「長期保有株主優待」を新設し、当社グループの事業エリア外にお住まいの株主さまにもご利用いただける内容(三重のグルメギフト)としました。これにより、株主の皆さまにとって魅力的な優待制度を実現し、当社グループの事業を身近に感じていただける環境を整えております。今後も業績向上に努め、誠実かつ持続可能な経営を通じて、株主の皆さまに信頼される企業であり続ける所存です。
当社グループは、持続可能な社会の実現を目指し、地域社会と共にさまざまな課題に取り組んでいます。グループサステナビリティ推進委員会を中心に、環境保全、人権の尊重、働きがいのある職場づくり・人材開発、公正・適正な取引、危機管理の5つの基本方針を掲げ、それぞれの具体的施策を着実に推進しています。
当社グループでは、事業活動における環境負荷の低減と脱炭素社会の実現を目指しています。三重交通(株)では、計6台の電気バスを導入しており、名阪近鉄バス(株)でも2024年4月に1台の電気バスを導入しました。加えて、観光客が多い伊勢市内や通勤客が多い四日市市内では、輸送効率に優れ環境負荷の低減効果も期待できるハイブリッド連節バスを計4台運行しています。さらに、名阪近鉄バス(株)では2024年3月から燃料電池バスを1台導入しており、今後も環境に配慮した車両導入を積極的に進めてまいります。
また、地球温暖化対策や環境負荷の低減を目的として太陽光発電所(メガソーラー)を稼働しており、現在33ヵ所で年間約1億4千万kWhを発電し、再生可能エネルギーの活用を通じたCO2排出量削減に貢献しています。新たに開発されたオフィスビルにおいても、環境に配慮した設計を採用しています。2024年に開業した「第2名古屋三交ビル」ではZEB Oriented認証(一次エネルギー消費量40%以上削減)を取得、2025年8月に開業した「四日市三交ビル」ではZEB Ready認証(一次エネルギー消費量50%以上削減)を取得し、さらに「トラッキング付FIT非化石証書」を活用するなど、環境にやさしいオフィスビルの運営を実現しています。
サステナビリティ推進体制

社会における多様性の尊重や職場環境の改善への期待が高まる中、当社グループでは「人権の尊重」をサステナビリティの重要課題として位置付け、2024年2月に「人権方針」を策定しました。この方針に基づき、従業員一人ひとりが人権を尊重し、安心して働ける職場環境の実現を目指しています。方針の浸透を図るため、従業員向けの教育・啓発活動も積極的に行っています。
多様性の尊重も企業文化の根幹としており、障がい者雇用や異業種からの転職者の登用など、人材構成の多様化に取り組んでいます。女性管理監督職比率は2030年度に30%を目標としており、経験者採用やジョブ・リターン制度、働き方改革の推進を通じて、目標達成に向けて着実に上昇しています。また、地域社会と連携しながら多様な人材の活躍機会を広げる取組みも行っています。具体的には、三重交通(株)において三重県内の一部自治体と協定を締結し、60歳を迎えた消防職員が希望に応じてバス運転士として転籍できる制度を設けました。このように、当社グループでは、法令遵守や人権尊重を基盤としつつ、多様な人材が能力を発揮できる環境を整えています。
従業員の健康と安全は企業成長の基盤であり、働きがいのある職場の実現に向けて多様な取組みを進めています。健康経営の一環として定期健康診断や健康管理プログラムを提供し、メンタルヘルス対策として相談窓口も設置しています。健康促進イベントについても定期的に実施し、従業員の健康意識向上を図っています。
また、安全性向上のため定期的な職場点検を実施し、オフィス環境の改善やリモートワーク・フレックスタイム制度の導入により、柔軟で働きやすい環境を整備しています。これにより、従業員が能力を最大限に発揮できる職場を作り、持続可能な成長につなげています。
当社グループは取引先との相互発展を目指し、公正かつ透明性の高い取引を推進しています。「パートナーシップ構築宣言」に基づき、取引条件の不公平が生じないよう配慮し、グループ各社で倫理遵守と共存共栄の取組みを実践しています。
自然災害や不測の事態に備え、従業員の安全を最優先にした体制を整備しています。南海トラフ地震等への備えとして、安否確認システムを導入し、グループ全社員及び家族の状況を迅速かつ効率的に把握できる体制を構築しています。さらに、定期的な危機管理訓練や非常時連絡網の整備、食料・水・医療品の備蓄など、緊急時にスムーズに対応できる準備を行っています。
DXの推進は、当社グループにとって戦略上の重要課題です。ユーザー利便性の向上と業務効率改善を両立させるため、継続的な投資を行っています。
三重交通㈱と八風バス㈱は2025年3月、桑名エリアで運行する路線バスにおいてクレジットカード等によるタッチ決済を導入しました。今後も順次利用エリアを拡大し、地域交通のデジタル化を推進してまいります。また、「三重交通グループアプリ」は2025年8月時点で約6万3千人にご利用いただいており、バスの位置情報確認や近隣スポット情報・イベント案内のリアルタイム配信など、利便性向上に向けた機能強化を進めています。
社内業務では、これまでペーパーレス化やRPAによる業務自動化を推進してきました。2025年からは生成AIの活用も開始し、業務効率の向上と従業員の負担軽減を図っています。さらに、定期的なDX研修を通じて、グループ全体での意識向上にも取り組んでいます。こうしたDXの推進により、新たな価値を創出しながら、顧客満足度の向上と業務効率の改善を両立してまいります。
当社グループは、培ってきた信頼と経験を礎に、変化の激しい社会環境にも柔軟に対応しながら、さらなる成長を目指して歩みを進めています。地域社会やお客さま、株主の皆さまと共に課題解決や価値創造に取り組むことで、持続可能な企業グループの実現を目指してまいります。今後とも、皆さまとの信頼関係を大切にしながら、新しい挑戦と共創を続けてまいりますので、変わらぬご支援を賜りますようお願い申しあげます。