東京証券取引所の最上位市場である「プライム市場」を選択した企業は、コーポレート・ガバナンスコードで、気候変動が与える影響についてTCFDの提言に基づく開示を求められるようになりました。当社は、気候変動に伴うリスク・機会、財務的な影響等を提言に即して開示をしてまいります。
TCFD提言に基づく気候関連の情報開示(2,292KB)
当社グループは、持続可能な社会の実現に向け社会的責任を果たすために、グループサステナビリティ推進委員会(以下「推進委員会」という。)を設置し、ESGの重要課題への対応を通じたサステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進しています。また、取締役会はグループサステナビリティ基本方針を策定するとともに、推進委員会より定期的に(年1回以上)報告を受け、その監督を行っています。
中長期の視点で気候関連の「リスク」と「機会」を特定し、事業へのインパクトや影響を評価するとともに、複数の気候関連シナリオを使って財務的な影響を分析し、今後の戦略と対応策の検討を行いました。
当社グループのシンボリックな事業であり、かつ、Scope1・2の合計排出量が最も多い運輸セグメントを情報開示の対象としました。
分析時間軸を2050年とし、シナリオについては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)※1が策定した4℃シナリオ(RCP8.5)※2と2℃シナリオ(RCP2.6)を採用しました。
以下のSTEP1~4の手順に従ってシナリオ分析を行いました。
リスク・機会項目 | 事業インパクト | 評価 | |||
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大分類 | 小分類 | 指標 | 考察:リスク | 考察:機会 | |
移行リスク・機会 |
炭素価格 | 収益 支出 |
|
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大 |
エネルギー価格 | 収益 支出 |
|
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大 | |
顧客の評判変化 | 収益 資産 |
|
|
中 | |
投資家の評判変化 | 支出 資産 |
|
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中 | |
物理的リスク・機会 |
平均気温の上昇 (猛暑日増加・冬日減少) |
収益 支出 資産 |
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|
大 |
降水・気象パターンの変化 異常気象の激甚化 |
収益 支出 資産 |
|
|
大 |
項目 | 現在(シナリオ 設定時) |
2050年 | 出所 | ||
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4℃ | 2℃ | ||||
炭素価格 | 炭素税 | - | - | 6,867円/tCO2(2025年) 15,260円/tCO2(2040年) |
IEA※1(2020) World Energy Outlook SDS |
エネルギー価格 | 原油価格 | 100$/bbl | 102$/bbl(2040年) 107$/bbl(2050年) |
71$/bbl(2030年) 66$/bbl(2040年) 56$/bbl(2050年) |
IEEJ※2 Outlook2021 「レファレンスシナリオ」 「技術進展シナリオ」 |
電力価格
託送費用込み |
23円/kWh | 23円/kWh | 25円/kWh(2030年) 27円/kWh(2040年) 29円/kWh(2050年) |
IEEJ 2050年カーボンニュートラルの試算 「ベース」シナリオをもとに当社が推計 |
|
合成燃料価格 | - | 700円/l | 200円/l(2040年) 100~150円/l(2050年) |
資源エネルギー庁 CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性(案) | |
グリーンLPG価格 | - | - | 950~990円/Nm3(2030年) | ||
平均気温の上昇
参考記載 |
平均気温 | - | 4.3℃ | 1.1℃ | 環境省・気象庁「21世紀末における日本の気候」平均気温の将来予測 (RCP2.6・8.5) 地域区分については東日本太平洋側 |
真夏日の日数 | - | 0~10日増加(2021年~30年) 20~30日増加(2031年~50年) 三重県・愛知県・岐阜県 |
0~10日増加(2021年~30年) 10~30日増加(2031年~50年) 三重県・愛知県・岐阜県 |
国立環境研究所「日本域バイアス補正気候シナリオデータ」(RCP2.6・8.5) | |
降水・気象パターンの変化 異常気象の激甚化 平均気温の上昇 参考記載 |
日降水量200mm以上の年間日数 | - | 2.3倍 | 1.5倍 | 文科省・気象庁「日本の気候変動2020」降水(RCP2.6・8.5) |
1時間以上 降水量50mm以上 |
- | 2.3倍 | 1.6倍 | 文科省・気象庁「日本の気候変動2020」降水(RCP2.6・8.5) | |
日降水量の年最大値 | - | 27%(33mm)増加 | 12%(15mm)増加 | 文科省・気象庁「日本の気候変動2020」降水(RCP2.6・8.5) | |
洪水発生頻度 | 4倍 | 2倍 | 気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会「気候変動を踏まえた治水計画のあり方」降雨量、流量の変化倍率と洪水発生頻度の変化 |
当社グループに与える影響が大きいリスク | リスクの財務的影響 | 影響と対応策 | ||
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4℃ | 2℃ | |||
移行リスク |
炭素価格 (炭素税) |
- | 大 |
[4℃シナリオ]
[2℃シナリオ]
(対応策)
今後量産が期待されるEVの乗合バス(国産車)については、現時点において、バッテリーの充電時間、走行距離、耐用年数等の詳細が明らかになっていないため、本格的な導入は2030年度以降になると想定しています。また、化石燃料(軽油・ガソリン)に代わる合成燃料については、2050年頃の普及を想定しています。一方、貸切バスについては、EV車両生産に関する情報が無く、合成燃料が普及するまでは軽油を使用することになるため、大幅なCO2削減が難しい状況にあります。 |
燃料費用 (軽油・ガソリン・LPG) |
大 | 小 |
[4℃シナリオ]
(対応策)
[2℃シナリオ]
|
|
電力費用 | - | - |
[4℃シナリオ]
[2℃シナリオ]
|
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物理的リスク |
外出機会減少によるバス等の利用減少 | 中 | - |
[4℃シナリオ]
(対応策)
[2℃シナリオ]
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施設等の浸水被害 | 小 | - | [4℃シナリオ]
(対応策)
[2℃シナリオ]
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グループサステナビリティ推進委員会に設置された環境部会において、グループ全体(当期については運輸セグメントのみ)の気候変動に関連するリスク・機会を選定します。そして、これらの中からビジネス・戦略・財務に大きな影響を及ぼす可能性がある項目については、重要なリスク・機会として特定し、対応方針と合わせてグループサステナビリティ推進委員会から取締役会へ報告します。
中長期的な温室効果ガスの削減計画を策定し、2050年度のカーボンニュートラル(CO2排出量実質“ゼロ”)を目指します。その達成に向け、営業車両の電動車(ハイブリッド含む)への切り替えや省エネ機器の導入、EVバスの試験導入等を通じ、2030年度のCO2排出量は、2013年度に比較して30%削減を目指します。
対象スコープ | グループ全体 目標値 (基準年度2013年度) |
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Scope1・2 |
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EVバスの開発スピードや技術的な課題解決、また、合成燃料等のクリーンエネルギーの普及が早まれば、現在の見込みより削減率が大きくなり、カーボンニュートラルの達成時期が前倒しできる可能性があります。